私は、ひとの恋愛談を聞く事は、あまり好きでない。 恋愛談には、かならず、どこかに言い繕いがあるからである。

恋を語る言葉には、無意識に自分を飾ってしまう「嘘」が混じることを指摘した言葉。

太宰治は、人間の心の奥にある「見栄」や「自意識」を誰よりも敏感に感じ取っていた作家でした。 私たちが誰かに恋の話をするとき、無意識のうちに自分を悲劇の主人公に仕立てたり、相手の非を強調したりして、物語を「編集」してしまうことがあります。 それは悪意ではなく、傷ついた自分を守るための本能に近いものかもしれません。 この言葉が心に響くのは、誰もが「本当の自分」と「人に見せる自分」のギャップに、薄々気づいているから。 言葉にできない生々しい感情こそが真実であり、語られる言葉はあくまでその断片に過ぎないという、人間への深い洞察が込められています。

友人から恋の相談を受けたときや、自分の失敗談を誰かに話すとき、この言葉をそっと思い出してみてください。 相手の話に違和感を覚えても「今は自分を守るために言い繕っているんだな」と、ありのままを受け入れる余裕が生まれます。 また、自分の言葉がどこか嘘っぽく感じて落ち込んだときも、それはあなたが自分を大切にしようとしている証拠です。 完璧に正しく話そうとしなくて大丈夫。 言葉の裏側にある、形にならない本当の気持ちを大切にするだけで、人との付き合いはぐっと楽になりますよ。