日本の文学史に鮮烈な足跡を残した小説家、太宰治(1909-1948)。わずか39年の生涯ながら、数々の傑作を世に送り出し、その名は今も多くの人々の心に深く刻まれています。彼は、人間の内面に潜む弱さや葛藤、そして生と死の淵をさまよう魂の叫びを、時にユーモラスに、時に痛切な筆致で描き出しました。その繊細で破滅的な美学は、時代を超えて現代にも通じる普遍的な問いを投げかけ、読む者の心を捉えて離しません。彼の紡いだ言葉の数々から、あなたもきっと、忘れられない名言を見つけるでしょう。
人生はチャンスだ。結婚もチャンスだ。恋愛もチャンスだと、 したり顔して教える苦労人が多いけれども、私はそうではないと思う。 私は別段、例の唯物論的弁証法に媚びるわけではないが、 少なくとも恋愛は、チャンスではないと思う。私はそれを意思だと思う。
とにかくね、生きているのだからインチキをやっているのに違いないのさ。
僕は自分がなぜ生きていなければならないのか、 それが全然わからないのです。
恋愛とはなにか。私は言う。それは非常に恥ずかしいものである。
「男女同権」とは、男の地位が女の地位まで上がったことなのです。
幸福の便りというものは、待っている時には決して来ないものだ。
人は、本当に愛していれば、 かえって愛の言葉など白々しくて言いたくなくなるものでございます。
愛は、この世に存在する。 きっと、ある。見つからぬのは愛の表現である。その作法である。
大人とは、裏切られた青年の姿である。
人間は恋と革命のために生まれてきたのだ。
人は人に影響を与えることもできず、また人から影響を受けることもできない。
死のうと思っていた。 今年の正月、よそから着物一反もらった。 お年玉としてである。着物の布地は麻であった。 鼠色の細かい縞目が織り込まれていた。これは夏に着る着物であろう。 夏まで生きていようと思った。
愛は最高の奉仕だ。みじんも、自分の満足を思ってはいけない。